焔洋 / ****'04/小野 一縷
 


「これは 痛みだ」 

手馴れた手業で 素早く甘く 窒息させられるように
じんと濡らされた 淡く蒼白い絹糸で縫われた 布の冷たさが
全身をしんしんと 高密度で包んでゆく

「これは 甘い痛みだ」

書き記そう

隙の無い絶対完全完璧な陶酔の純潔な快楽こそ覚醒と呼ぶに相応しい
遠く見える純潔な金色の海面の波長に平衡感覚を溶かし込む
視覚と聴覚 味覚と臭覚を指先に集結させる
現在 この時間流域と空間帯域に浸り全身で感知し全身で味わう ひたすら
的確最適に高い質の酔いは吐気の湧出とその沈静の波紋を
自由に踊りながら乗り越えて胸の奥へ奥へと滲入する
暗く甘い眩暈の臭気
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