母性という幻想/宮前のん
たかった。「自分は母親に愛されなかった子供」なんだと、認識するのが恐かったからです。「母親が、実の子を嫌うなんて、本能的にあり得ない」と思いたかった。
だけど、自分が母親になって言えることは、私の場合、子供に対する愛情は生まれた時は最初ゼロだった、ということ。子供が育つにつれて、愛情も育てることができたのだ、ということ。だからたぶん、私の母のように、愛情を育てるのがヘタな人もいるのだろう、というおぼろげな推察。うまく愛情を育てることができる人と、そうでない人の違いは、まだわかりません。でも、全員が全員、子供への愛情に満ちて、喜んで世話や努力をしているわけではないと、今なら素直に思えるのです。
もし仮に、こういう赤ちゃんの世話を夫が率先してやっていたとしたら。育児休暇とかで1年間職場を休んで、24時間付きっきりに世話してくれたとしたら。私は、赤ちゃんは夫に抱かれたら泣き止むようになったと思います。そうなった時、今と同じような愛情を息子たちに持てたかどうか、解らないと思っています。
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