ムニエル/純太
メジを焼き始め
胡椒に「お前は魚の為にある!」
と因果を含め旅立たせてやった
醤油よ・・・今夜お前はいらない
ごめんよ醤油
男の料理ってそんなもんなんだ
みなまで言うなって雰囲気出すなよ醤油くん
でもそれでも何か足りないと今宵も思ってしまった
フライパンに蓋をして蒸している間
相変わらず支度をしている君を見ながら
俺と君の間に何か足りないことはあるだろうか
俺達はこの部屋で互いに触発し合い
涙をぶつけ合う日々の中で無邪気な笑顔を探している
それでも何か足りないものはないかと感じてしまうのは
君に対する想いも愛に変わってきてるのだろう
そんなこと思っているうちに
どうやら鱈は蒸されたようだ
蓋をとって柔らかい湯気に顔が包まれ
香ばしい匂いが漂い俺はフライパンに感謝しながら
目を瞑った
「今日は黄色のマフラーしていこうかな」
俺は慌てて冷蔵庫宮殿からレモンを出した
柔らかく溢れ流れきた風が
食卓に月光を注いだ
このカンデラが最後の調味料
だから俺と君は今宵も
その鱈のムニエルを
ジュールにできた
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