マヌエラの猫たち/アラガイs
ると
注意したその口からわたしが冷たい人間にみえてきた。
家の窓を開けたら毛玉の猫がおもいきり飛び出してきて
白い庭先はもうすっかり春らしい青空に照らされている
)いきなり大きな声に驚くと(
猫の耳はチューリップに逆立ち
晴れた日の光が八面鏡石のなかで反射を繰り返す
重力に逆いながら生きているモノ。
そして二人と一匹がともに眠るとき
互いは記憶のなかで孤独なのだ 。
飼い猫にこころを奪われていると結婚は遅くなる
むかし恋人が言った言葉を今でもときどき思い出す 。
その日テレビでみた。
マルタ島の青い海岸にはマヌエラという男がいて
猫が恋人だから結婚はしない
と、笑顔で言った。
それでも何故か重たそうに
虚ろな瞳で
一日じゅう野良猫をみつめていた 。
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