美術用品のある日常/
吉田ぐんじょう
きてはたまらないので
デッサンを始めるのはやめにしたのだ
もしうまい絵が描けたら
飾ろうと思っていた額縁には
入れるものが無いからしかたなく
茶箪笥から
自分のへその緒を出してきて入れた
奮発して買ったいい額縁なので
意外としっくりおさまった
以来へその緒は
わたしの部屋の壁で
かつてわたしが
存在しなかった日々について
回想しているかのように
ぽつんと沈黙を守り通している
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