美しいこと/はるな
 
意識も、ぜんぶだ。
それでも世界はかたちを変えた。幸せをおもった。ひとり残らずすべての人々が幸せに向かうべきだとおもった。憎しみは憎しみのままで、あたらしい幸せが訪れるべきだと思った。平等に。
今はすこし違う。わたしはわたしの手ではわずかなものしか守れない。そういうわずかな、手のひらに入るくらいの大事なものをぎゅっとして、たしかめていよう。それはいつか変わってしまうかもしれないし、摩耗してなくなっていくかもしれない。大事だと思えなくなるかもしれないし、捨ててしまうかもしれない。それでもいいのだ。いまここにあって大事なものを、惜しみなく愛する。そうと決めたら、うたがわず、ぎゅっとひきつれていよう
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