雨の後/ズー
雨が降った。わたしは雨の足に圧迫された。爪先から踵まで力に満ちた足は、わたしの体に、触れず、目の前を塞いでいく。雨水の、どの部分も干からびていて溢れてくる。一粒でも零れると、それは止まらなくなり、旱魃をおこした土に吸い付いていった。後に残されたものは、わたしだけだ。雨に濡れることもなく、間抜けなままの、わたしだけがいた。
「生まれただけのお前が私を忘れていく時に雨音を立てた。その音に、体を与え、頭を乗せ、手足を揃え、血を通わせた。お前の為に降り、お前の目の前に降り、お前を踏み潰すだろう。お前の隣に居座り、声を発するだろう」
「耳を差し出せ」
「少しだけ濡れるぞ」
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