羊・風車・深海魚/小林 柳
 

バスは砂の街を過ぎた。
撒き上がる砂埃に、窓の外側がざらついている。広い道路が先細って、地平線へ続くのが見える。
小さな土煉瓦の集落が、前に現れる。薄汚れた数頭の羊が、崩れ落ちた土壁に囲まれ、動かない。数軒の低い家が、後ろに消えていく。また小さな集落が、現れては消える。
トラックとすれ違うと、人の気配がする。今頃は、人の灯りへと急いでいる頃だ。
このバスは違う。 そこから出発したからだ。


名前のない土地に、白い風車群がそびえる。病にかかった木々のように。そこに立つ意味を、待ち受けるように。
この場所には終わりがない。変わらない風景が過ぎては、現れる。
過ぎては、現れる。過
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