猫が通り過ぎる/within
ねこのこえがきこえる
冬空の底のそこのほうから
窓をあけてみても
すがたはない
姿などなくても
わたしだけに届くように
ないている
てつがくなどなくても
ねこは生きていける
わたしのてつがくも
うまれたときにはなかったもの
なのに今では
中毒のように
セカイを塗りつぶしている
だれにも見つからないトンネルの
向こう側で
ここはわたしだけの場所
人にもけものにも
みつからない場所
電気も水道も下水管も
届いてない場所
みてごらん
みてごらんといわれて
みてしまったから
もどれなくなった
死んでしまったひとたちが
宿る森の奥には
塗られ
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