私、総勢無限大/Seia
二人掛けの座席に体を埋めて
揺られている 誰かが思う
向かって右の初老の男性には
孫が居たりするのでしょうか
薄いグレーのような日の事です
井戸の中から連れ出してと
人に焦がれた蛙が言いました
奈落の底から青空へと
幾ら日々をコマ送りに飛ばしても
時間が今を破棄していきます
台所に立った 誰かに半身重ねた右
そこに もしかしたら女の私が居て
冷蔵庫を開けた 誰かに半身重ねた左
そこに もしかしたら男の私が居て
もしかしたら そのどちらかが
普通だったのかもしれない
それは想像の中の分岐ルート
それは想像の中の転機
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