われわれから切り放た(る)る球体/アラガイs
 

いつか自動販売機の下に転がっていた五百円玉をこっそりと拾いに屈んだ瞬間()東の空の彼方から突然現れて来て
(すると制服を着た警官が二人後ろから缶コーヒーを買いにやって来て
)僕は何年ぶりかの恩恵を貰い損なった 。
もっとも
こっそりが気に食わなかったらしいんだけど
―つまり
変わりものが嫌いってわけさ


十八年も飼っていた右片方の耳が千切れたパウンド犬が死んで
僕が哀しみの途方に暮れていたときなんか そいつは絶対に出てきたりなどしない 。
―どうやら
哀しみはもっと想定外なわけだ。

僕は怯えている
やつの憎しみの無さ
愉しみの肯定さ
そしてなによりも冷静な眼差し
〜ふわり
ぷかり

土の中がすっかり熱気を取り戻した啓蟄の日に芋虫の幼虫が次の交尾に備えて立ち上がろうとするとき
また(‥ ‥のような)わっかを取り付けて一回り巨大化して現れるんじゃないだろうか
〜ふわり
ぷかり
)と







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