課長さんは二度尻をふる/アラガイs
 
と駆け込んだ中年のおやじが、黒いかばんを小脇に挟んで、よれよれのハンカチで手を拭きながらしこしことトイレから出てきた 。
おやじは小太りでメガネをかけていた 。
( ふぅ 〜) と ため息をひとつ吐き出すと、 横目でじろりと若いカップルを睨みつけ、 髪の毛をたくしあげながら 二つ向こうのベンチに座った 。
たくしあげた前髪の毛は、かなり薄かった 。
しかし、(まてよ‥
あの姿は どこかで見た記憶があるにゃあ‥ )
(そうだ ! ちがいない あの中年のおやじは 〇〇ボルケ商事の課長さんだ ! )
(おいら、以前生まれて間もない頃
あの会社の近所に捨てられたんだに
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