少年は、そのベッドに他人が寝ているような気がした/真島正人
 

少年の部屋の
細かい埃を
浮かび上がらせた

ベッドから
身を半分起こして
その埃を
眺めていると

ふいに
体のシーツの隙間の空白から
しわくちゃの手が伸びてきて
少年の心臓をつかんだ

少年は
驚き
気絶しそうになったが

その掌は
暖かく、
とても暖かく
柔らかであり
少年の心臓を
やさしく
やさしく
握り締めていた

少年は
ため息をつき
動かなかった

長い、
時間が経過して
母親が
ドアをノックする頃
しわくちゃの手は
日差しの中に溶けるように消え去り
そこには
少年と
彼の体に残った
暖かい熱だけが
あった


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