黒い鳥/アンテ
 

耳を澄ませると
どこか遠くから
泣き声が聞こえてくる
可哀想に
きっとわたしのように理由もなく怯えているんだ
声の方に向かって進む
教えてあげなければ
ぼんやりしていた世界が
少しずつ鮮明になっていく
あれは
背の高い樹だ
その向こう
小さな家が建っている
泣き声は中から聞こえている
扉も窓も
頑なに閉ざされている
樹の枝の端にとまって
家を見つめる
大丈夫
そう伝えたいのに
声が出ない
まわりを見ると
黒い鳥がたくさん枝にとまっている
泣き声が
いつまでもやまない


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