満而不溢/ayano
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それだけが現実のような気がした
*
きっと蜜月へいくとき 冷たい手で引かれて
わたしは なんて呼べばいいかわからない あなたを、
はやくも愛と云われるものすべてを放棄し
瞼を閉じて知らないふりで歩いていく
地面に散らばる宝石に見向きもしないで、
金属をつけた指が食い込んでも いたくない
ないない
異国の地に溺れて 知り得る出会いを遮断し
これから先の道で 淫らな恋を見つけても
文化の違うラブソングを聴いて泣けなくとも
すべてが低空飛行の結果であったとしても
まるで兵器の婚礼と笑われても
武器に墜とされる苦しみと酷似していたとしても
シロクロの私たちの写真を撫でる母の姿や
法律も世界もなんにも恨まない穏やかな父
それに
ずっと手を繋いでいてくれた人の存在
争いの休息地の爆ぜる音が響いて
地球は丸いから一人になれやしない
今日も今日が終わりますようにと
願うばかりです
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