詩腫/アンテ
 

可哀想なわたし

どうしようもなくなるたび
くしゃっ
押し潰して
なかったことにした

――瞳孔反応がありません
初期的な防衛本能の典型的な症状だ
――心停止しました
意識が肉体と分断しているから蘇生させれば問題ない
――脳波がありません
よく見ておきなさいこれが意識の殻化だ

回廊
というそうだ
とても長い廊下にわたしひとり

タマゴ
というそうだ
白い閉じた世界にわたしひとり

もう大丈夫です
詩腫はきれいに摘出しました
転移の心配はないでしょう
無理に感じようとしてはいけませんよ
一番大切なのは
言葉で理解しないことです

小さなビンに詰めてもらった詩腫
どこかで見たことがある

でもどこだっただろう

どこだっただろう

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