人間ではないアイロン/真島正人
は答えた
数ヵ月後、
カラスは国道で、
羽と肉の残骸になった。
人間ではないアイロンは
人間ではないので
寂しかった
寂しかったので
じゅぅじゅぅと
湯気を上げながら
次々と布切れを
平らにしていった
けれども
人間は
衣服を汚してしまうので……
※
けれども人間は
衣服を
汚してしまうので、
人間の指もやがては
大きな湯気を立てて
次々と布切れを
平らにしていく時期が来る
人間の皮膚はとても弱いので
高い熱に
耐え切れずに
爛れ
とろとろに蕩け
元の状態を保てなくなる
かわいそうだったアイロンは
人間ではないので
硬いそれ自体の形質を
保持し
やがては
『変わらない風景』の中に
馴染んでいく
そして
『風化』をするのだ
※
風化、
変わらないそれが、
唯一抗い、
または
時間の密度と
空間の密度の中で
ふるいをかけられ
ゆっくりと
ゆっくりと
(その速度は、まちまちだけれど)
抵抗と従属を
繰り返す
ための、
その凡てとして
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