明日の人/桜 葉一
 

 明日の人が
 明日の話をしに
 今日にやってきた
 昨日もやってきたというが
 僕は覚えていない
 昨日ということは
 明日の人は
 今日の話しをしていったのだろうか
 やっぱり僕は覚えていない
 
 明日の人は明日よりも今日のほうが心地よいよ
 といって少し笑った
 だからあんまり明日に帰りたくないな
 そういって今度は寂しそうな顔になる
 立ち去ろうとする明日の人に
 なんと声をかけていいのわからず
 僕は 「また会いましょう」 と言った
 明日の人は微笑んで僕に手を振った
 
 夜になって明日の人のことを考えた
 明日の人はどこか僕に似ている

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