スランプ/細川ゆかり
 
それじゃあたしはどうしたらいいんだ
なんてぐるぐると渦巻いて

好きと嫌いでは世界に線引き出来ないのよ
と、境界線が、笑った。

私の指先や唇からは
何か
とてつもないものがあふれ出して
天も地もひっくりかえすのだと
思ってた
それが幻想だなんて野暮なこと
わかってた

アルコールで漬け込んだ脳みそからは
ろくなものが生まれやしないと
それでも
奇跡なんて安易なものを期待しながら
キーの上を指先が踊る
ペンを握る勇気がないから

明日の朝日をどううたおうかと
思いめぐらし夜が明ける
それを
幾度なくも繰り返しては
まだ
あふれ出しているのだと

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