下戸遺伝子/板谷みきょう
くさくて
どうでも良かった
飲み会の間に
何とかふらつきながらも
立って歩ける位に回復できていた
飲み会も終わり別れ際
介抱してくれたことのお礼を言ったら
まだ一人で帰るのは危ないからと
看護婦さんたちが話して
一人がタクシーで
アパートまで送ってくれることになった
安アパートの玄関の鍵を開けてくれ
部屋まで入れてくれた看護婦さんは
大陸の遺伝子を持ってるんだね
これからは気を付けないとね
帰り際にそんなことを言うと
口付けをしてくれた
きっと、待たせてあるタクシーに
乗って去っていったのだろう
あの看護婦さん
お目当ての女性では無かったけれども
素敵で柔らかな唇だったことだけは
三十年以上経った今も覚えている
戻る 編 削 Point(5)