あなたへ/yuko
 
日が射して、窓の外を直視することができずにいます。こちらはといえば、肺を悪くしてから、呼吸をするたびにひゅうひゅうと煩いので、先日、母が耳を落としてくれました。わたしたちはたがいの声帯を触り合って会話をします。首の据わらない母の口元を、きれいなハンカチで拭ってあげるのが好きです。彼女の視線はいつもすこしだけ右上にはずれていて、私は川の話をする。だくだくと流れていくものの話を。私にとっての母は、たぶん窓枠なのでしょう。
 そして窓の外はすべてあなたです。なんて言ったら、あなたは驚くでしょうか。然し私は、これ以上のことばを持ちません。窓の外はすべてあなたですから、私は鍵に手をかけることができない。す
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