夕海/梨玖
 
呟いた声は濁った空気を吸い込んで枯れていた。
薄ら寒い不安。響いていく限界の破壊音。そうしてはまた繰り返し城を制作。砂を集めすぎた小さな手はざらついていて。

キィキィと泣くブランコ、ちかちか、切れ掛けの電灯。出現し始めた月と夜。此処は騒がしいのに。どうしてぼくは泣いているの。

母が来たら、思いっきり罵声を浴びせよう、ね。
反転した風が、きっと涙を拭いてくれるだろうから。

空が鈍色に変わる。飛び交う電波。雲ももう見えない。影が隣でそっと伸びる。
此処においていかれるのはこわいから。
闇に苛まれる焦燥感。襲い来る収縮する夜。追いかけてこないで。ぼくが耐えきれなくなる。

どうか早く母が来ますように。
それまではこの遊びを。
夕日と地平線の境界線が溶けるのをぼくは背中で感じた。





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