夢(仮題)/佐倉 潮
た。そんなものをなぜ女がまとめているのか分からずに、僕はただその作業をじっと見つめていた。
やがて、カチリ・カチリという音が速くなり、ドク・ドク・ドクという別の音に変わった。いったい何だろうと僕が不思議がり辺りを見渡すと、それが自分の胸の鼓動だと分かった。やがて次にドン・ドン・ドンという激しい音に変わった。カフェの外から壁を叩く音だ。無数に聴こえる。多くの群衆がカフェを取り巻いているようだ。でも窓の外は静かな田んぼが広がっているというのに。
「あれは張り紙よ」と女は窓を指さして言った。「あなたの願望でしかない」
「君は、誰かに追われているのか?」僕は尋ねた。
「塔の頂きを探してい
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