夢(仮題)/佐倉 潮
 
 夢の中で女に会う。古ぼけたカフェ。窓には青空と田園。流行りのマキシ丈のスカート。腰から足元にかけて伸びるドレープの薄い影。肩よりも長い髪。チャコールグレーの瞳は、湖の底に沈められた文字盤の無い時計のようだ。女はデカフェを一口すすると言った。「ここは自由」そして続けた。「なぜならとても不自由だから」
「夢の中だからだよ」と僕は言った。「分かりきったことだ」
「しばらくはここにいるわ」そう告げてまた一口すする。「その後どうするかはまだ決めてない」

 スカートの裾はぼんやりしている。古代の歴史書のように。ただ足の爪に塗ったペディキュアが猫の目みたく光っていた。もしかしたら本当に猫が居たのかも
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