残照 / ****'98 '01改編/小野 一縷
君がいる
横たわる 残骸の傍に 君がいる
「・・・・・・・・何か 見つかった?」
甘美で深遠なる朦朧が 喋ることを許さない
呻きを振り絞って
最後まで残った「ぼく」が 君に伝えよう
「かつて君が愛した ぼくは どこにも居ない
さようならって 言ってたよ」
左腕の縫合痕を 君の薬指がなぞってゆく
左眼の切れ端を 君の小指がつたってゆく
訳も分からず 流れた涙を 君は唇で塞いだ
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残った「ぼく」は 一つ一つ
失った ぼくを拾い集め
時に新しく造りだし 時にまた放棄した
※年経って 今
ここで ノートの上で 詩の血になった
過去と こうして 向き合っている
−了−
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