見送る/
岡部淳太郎
ちは結局それぞれにひとりで
それぞれに淋しいだけだった
そんなことは俺たちにもわかっているはずだが
やはり黙ったまま列車を見送るだけだった
もういくつの列車をこうして
見送ってきたのだろう
俺たちは柵の中で見上げては
見下ろしつづけた
見送る
そのことの情け
あるいは情けなさ
俺たちはその中で変らずに
俺たちでありつづけるしかなかった
いのちのしずけさも変らず
それは見送られることなく
俺たちの中にありつづけた
(二〇一〇年十一月)
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