不幸な女/アラガイs
 
振り向けば囁くように語りかける一つ目の怪物
耳を奪われ
その目を潰し
ひと肌さまよう痣黒い羽根
唇をなめ、澄んだ水面を真探る細長い指先の円
上澄みを掬い上げれば、淀む精液に身をながす
羊水に膨れた小腹が花藻の小川に浮かんでいる
ただよう扇髪の
あかいいと

二つに割れた鏡の向こう
唇は因果に歪み
溜まり続ける角質の醜さ
舞い上がり
舞い落ちる、その一文字の矛先に、不幸な女の涙の足跡が、辿り着けない母屋への稜線を刻む

花は どこ

夢をみたの

ひとりでは生きてゆけない と

掬う泉の血のうすさよ

湯の華に沈む

髪の重さよ






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