「 探し物 」/椎名
 
夢の中を彷徨っていた

泳げないはずの海の中

魚になって泳ぎ回る

深い深い海の底に

大切なものを落としたから



必ず見つけなければと

こころが焦る

もぐっては上昇し

魚のくせに息をつく

見上げた空に半分の月



満月まではあと何日

それまでこうして探し続ける

半分の月明かりでは探せない

見つからない

海の底は暗すぎる



泣いていたのかな

目覚めたら睫が濡れてた

窓の外は秋

燃えるような紅い葉が枝先で揺れている

持ち続けるには重くなりすぎた心のようで



探していたのは

夏の思い出

終わってしまった季節の忘れ形見

心の底に沈んだ想い

もう二度と微笑んではくれない映像




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