真冬の夜行列車に乗って/虹村 凌
 
タッシュケースが
本当は古着屋でかった1000円の旅行鞄で
財布の中には小銭しかなくて
無計画に北に向かう度胸も無くて
それでも
助けて欲しいと言えないのだ
だから北へ
北へ
北へ
北へ行って雪をみたらきっとどうにかなると
自分が見える様な気がして
また笑って煙草を揉み消すんだ

誰かを失望させたりする事を
ずっと考えながら
ずっと怯えながら
無難が一番だと笑いながら
当たり前の男になったんだ
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