椅子が記号になるために/乾 加津也
巣食う壊死は、いつわり
樹海、じかんがおしひきする波状のあたり、膝をかかえた精子は、林檎の皮むきのようにくるくると下にむかって、わたしの骨格、わたしの歩幅、そそりたつ発情、放佚、くしゃみ、舌の大仰、あやまちの打ちのめされ様、わたしのゆくえ、を、古生の根株から、いずれ戻りくる、まで、で、瘤の一巡
椅子に、ふみこみ、わたしはやすむ
みかくさえ、鼈甲にひろげ、乾(ほ)す
できるだけあかるい色をつけたいのです、年代もので、つやや手垢もまぜこんだあざなどもつくってやりたいのです、わたしが死んでも彼は死なない、彼は椅子です、どこかの波打ち際でくたびれた彼をひろう顔のないだれか、それまで
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