間際/山内緋呂子
 
柱に 「ゆるぎなくなりたい」
とかかれていたので
指でなぞっていると
重信房子みたいな髪の人が 近づいてきた
きっと この人がかいたのだ と思ったけれど 言わない
彼女が 砂の芽を ずっと指でからめていたからだ

足許の鳩が 飛び立って 彼女は

「低空飛行する鳩は 
         飛ぶことを楽しんでいるのよ」

などと言う

今日は家に帰れるだろうか
割れなかった ガラスの犬小屋を持つと
彼女が 物欲しそうに見つめる

「つめたい」と思いながら しっかり犬小屋を持ち
坂をかけのぼると
白髪に 赤い着物の おばあさんが 立っていた


 :これはnm6さんとの連詩です。nm6さんの「グッド・イブニング」に続きました。
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