あの日あの場所で/アラガイs
 

妖気漂う刺青の白い肌
石熱に浮かぶ唐草模様
殺し殺されても/あなた
死人には
口があるとは
思いませんか
/
あの日
あの夏の夜
呼び出された倉庫で
確かに僕たちはあいつらを殺してやりたかった

ふりあげた石の向こう側に
誰かの嘆き悲しむ顔さえ浮かばなかったなら


置き忘れたかのように
いまでも夢にみる
僕らは【負け犬】と背中に入れ墨を彫られたまま
あの時の口惜しさを虚しく吠え続けていた
朦朧としたあの夜を
空かさないままに


あの時
あの場所で
人生はどっちに向かっていたのか
僕たちは
ふりあげた銀の石斧をふりおろすことができなかった
ただ殴られるままに耐えた
それは
誰かの嘆き悲しむ顔が浮かんで見えたから
/
ねぇ
梵字のよう
死人には
口があるとは
思いませんか






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