浮かんでは消える。/かいぶつ
ブも持たずに
縫い目のない僕の手に捕えられるものと言えば
やさしく軌道に乗った紙風船や
君の変わらない声ぐらいだったのかも知れない。
去年の今頃ってどこ行ったっけ? と回想しながら
浮かんでは消える、こころ覚えをつっついて
多摩川沿いを家までを歩いた
閉店間際の酒屋さんに寄って
いつもは、い・ろ・は・す や、DAKARA
しか買わないのだけれど、その日は珍しく
お酒を買って帰った。
部屋に戻ってとりあえずつけるテレビ
ニュースは、富士山に去年より十二日早い
初冠雪が観測されたことを告げている
雪化粧、という言葉が僕の耳に心地良くひっかかり
食器棚から
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