見張り塔から/
塔野夏子
で
今や見張り塔の位置さえ
さだかにはつかめなくなっている
(いちどは僕みずからが
あの塔のてっぺんにいたのではなかったか)
黒い鳥たちの群れを透かして
もういちど見張り塔を見い出せるか?
そしてそのてっぺんへとのぼってゆけるか?
そこから何が見えるとしても
もうすべて無駄かもしれなくても
そしてできることならそこから
きらめくような花束を投げてみたい
過剰なしかし稀薄な世界たちのただ中へ
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