見張り塔から/塔野夏子
 

今や見張り塔の位置さえ
さだかにはつかめなくなっている

(いちどは僕みずからが
 あの塔のてっぺんにいたのではなかったか)

黒い鳥たちの群れを透かして
もういちど見張り塔を見い出せるか?
そしてそのてっぺんへとのぼってゆけるか?
そこから何が見えるとしても
もうすべて無駄かもしれなくても

そしてできることならそこから
きらめくような花束を投げてみたい
過剰なしかし稀薄な世界たちのただ中へ




戻る   Point(4)