頬杖/小林 柳
 

数か月を一緒に過ごした季節が、けさ帰ったようだ。
挨拶はできなかったが、夜中から荷造りをする音が聞こえていた。
せめて手紙でも置いて行けばいいものを。

寝転がったまま薄目を開けてみると、
窓のすり硝子がビー玉のように青みがかっていた。
開け放つと、空は遠くまで雲ひとつなく片付いていた。

夏がいた場所には、すぐ秋が越してくるはずだ。
きょう掛け布団を干しておこうか。
考えながら蛇口をひねると、生ぬるかった水はもう冷たくなっていた。


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