レモン色のチューリップが/乾 加津也
レモン色のチューリップが
それは雨天のせせらぎであって
顔は飛沫(しぶき)をはじいていたのです
あなたは最初の花ですか
植物図鑑のはじめですか
あなたは「赤」のはずなのに
あなたの夢みる球根はぼくの小さな掌のなかで
校庭の片隅
人知れず埋められたはずなのに
それはぼくとともに大きくなって
年とともに色めくと信じていたのに
あれからいつしかみんなの花に
あなたはなっていたのです
こうしてレモン色のチューリップを
それも雨天のさざなみ 三輪も見ていると
つたないぼくは振り返ったりします
はるかな気品と乞わない威厳にうちのめされて
ぼくの靴はじっとりと濡れそぼり
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