バッタ (ご利用は計画的に)/乾 加津也
 
カキコ
ゆかりの詩人の指を一本拝借して詩を書いていたのですが
その指が痒いというのでクリップの先で擦ってやると
流れる血がまた詩の風貌に滲んできたので 調子にのって
ためしにインスタント珈琲を一粒まぜて分裂と彩色を促しました

 かげろうの 魚の?

電話がなりヘリウムガスの声で詩人が「ユビヲカエシテクレ」というので
お礼の指輪をくぐらせ翼(はね)をつけて窓から放してやりました
でも朝になるとわたしの指になって戻っていたので
祝杯だねとシャンパーニュ産の発泡性ワインをどっさり買いこみました
歯を磨いたり箸を持ったりする日常はいままでの指にまかせるとして
指は執筆にいそしみ
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