日向のころ/豊島ケイトウ
存在だけであなたを苦しめていることを知っているから
(あなたの肌に爪をたてたのは純粋な意地悪だった)
そうしてあなたがいなくなってからというものわたしは首から下を切断してしまったような気分だった
どこにいてもわたしはあなたに触れることを赦されずまた満たされない
(どうして早く判ってしまわなかったの?)
見えない触角をいくつもからませる――その間だけ時がとまっているように思ったけれど気がつくといつも「……」が恨めしかった
(もう手遅れだっていつごろ知った?)
どんなときでもおまえはいい子だともっともらしい声で褒めてくれた
今いちばんほしいものはあなたと会える鐘
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