チワワみたいに小さくて/(罧原堤)
 
あの犬だよ。あの犬、泣くんだよ、目からポロポロ涙をこぼして、ほら泣いてるでしょ」と、女子高生は窓ごしにその犬を指差した。ヒロくんの瞳から大粒の涙が流れて、地面に落ちていた。
 僕はいそいでケーキを受け取ると、外に飛び出て、チーズケーキをヒロくんの前に差し出した。
「ヒロくん」と呼ばれると犬はニコっとどこか悲しげな笑みを浮かべながらペロッとケーキをたいらげてくれた。ああ、僕が店を出てきたとき、まだ残ってくれていたから良かったようなものを。もし、いなくなってたら一生後悔しただろう。足で邪険に扱ったりして。もう、そんなことはしない。一緒に店の中に入ればよかったんだ。それで店員に注意されれば、汚いもの
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