温泉街/捨て彦
 
林君は通訳の役目をしている。これは他の能力者とのコンタクトの際も同様で、つまりトミーと小林君はセットで存在しているのである。
起き上がってまずおれはトミーに対してさきほど浮気相手の名を叫んだことを詫びた。小林君はおそらくまだ童貞なのだろう、詳細を知らずとも分かるうっすらとした大人の会話の中にそこはかとなく香る男女間の桃色事情を嗅ぎ取り、少し頬を桜色に染めた。そして桜色の頬を小さく緩やかに揺らしながら、テキサス訛りの英語でそれをトミーに通訳してくれた。なぜ小林君の英語がテキサス訛りという事をおれが知っているかというと、トミーが再三、小林君がいないときにおれの耳元で、「コバヤシ、イズー、ププッ…。テ
[次のページ]
戻る   Point(2)