十一月/豊島ケイトウ
 
この世の色では表わすことのできないものなのか――けれどもわたしはあなたにしじゅう溺れっぱなしになっているわけではないそこのところ甘くみないでほしいちゃんとワカッテイルのだわたしはこのごろ頭のすぐ近くに川の気配を感じる「あ、川だ」と言うが早いかどんどんその気配は濃く重くなってきて烈しい不快感に襲われるかつてあなたは濡れそぼった少年のようなにおいを内包していたわたしはそれを嗅ぐのがひとつの安寧だった水と生命のなまぐさい調和を何度も何度も注意深く味わった……今はどうだろう?あなたは、その川は、なにかに汚染されはじめている陰湿を帯びてきているわたしはそれが悲しいのか仕方がないことなのかよく判らない判らないまま今夜もあなたに会うつもりだ。
戻る   Point(12)