この思いをどこに持って行けばいいんだろう 1/千月 話子
 
 愛しいカレーよ


口の中で あらゆる香辛料が美しく混ざり合い
幻覚でフラフラになる前に
風呂でも入って
 取り敢えず 落ち着こう


 整えた息を 深く吸い込む
未だ あの悩ましい香りが部屋中に充満していない
そこに 漂うのは
香ばしい醤油と砂糖の甘辛い匂いだけ
 さっきは見えなかったじゃないか 糸こんにゃくよ!
ポリエチレンのビニールの中で
蠢く姿は透明だったんだ・・・


私は目に一杯涙を溜め
それでも2杯 白飯をお代わりする
せめて我が家の肉じゃがの肉が
豚肉使用であったなら と
袖口でグイと目を擦りながら
ああ、、、
明日には少し高めの専門店の
レトルトカレーを買ってきて
もしも地球に巨大隕石が落ちて来ようとも
その前に 旨いカレーを堪能してやるぞ と
堅く 堅く 堅く

心に誓う勢いだったんだ

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