ジュリエットには甘いもの 中篇/(罧原堤)
ていなかった。僕はしょげたし、また失敗してしまったことで、自分がなんでこの工場で働いているのかってことに意義を見出せなくなってしまった。だって、不良品ばかり作っていたら、工場は儲からない。それなのに給料を貰ってるってことが、心苦しくなるだろ。僕はここにいないほうがいいんじゃないかって。みんなだってそう思ってるんじゃないかって。冷却水を出さずに製品を作ってしまったのは一回や二回じゃないんだ。何回もやらかしちまってるのさ。その時ね、『凛くん』って、イエス・キリストが僕に始めて語りかけてきた。班長に睨まれながら怒鳴られて、緊張していた僕はね、キリストの顔に釘付けになってて、
『蘭野! 聞いてるのか、よ
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