新世界/相馬四弦
窓の外には
石となった旧人類を囲んで遊ぶ子供達が
誰一人として眠りを知らずに
すべての草花は咲いたままで 果てなく咲いたままで
毎日が祝福される たったひとつの俺の世界で
あらゆる正義が紙一枚の隙間もなく敷き詰められ
そのあたたかい地上に寝転がる日々を
あなたを愛していますと
百万言も刻まれた墓石を 成層圏から落下させてゆく
限りなく真昼に近づいた一羽の満月
旅客機のエンジンに飛び込んで砕け散る
さようなら旧い夜
参列者は手に手をとりあって輪となり
この陽だまりから地球を逃がさぬように
花束を抱えた少女が歌う私は
自由の虜です
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