にがお絵/まひ
 


もう絵はやめた
そう言っていたあなたが

鉛筆を一本買ってきた
照れ笑いを浮かべながら

これだけで描けるものを
それが今の気分なんだと

紙を忘れてしまったと
やっぱりちょっとぬけている

それから煙草の包み紙を
ていねいにほどいて描きはじめ

それはわたしの顔だった
それはわたしの宝物として

今も手帳に挟んであります
ぜんぜん似てはいないけど



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