うでげ/捨て彦
 
ていた。なのに、ふと隣を見ると男は私のことなんか知らないで幸せそうに眠っている。その顔を見た途端にどうにも我慢が出来なくなって、だから私は、私を腕枕していたほうのもさもさの腕毛を両手で思いっきりひっこ抜いてやった。男は声にならない声を上げて飛び起きた。

「なにすんねんっ」
「腹が立ったから抜いたった」
「抜いたったって、おまえ」
「おやすみ」

暗くてよくわからなかったけど、男の腕はものすごく真っ赤だったはずだ。
ざまあみろって感じだ。







「おっさん、もう一杯」
「もうやめときぃや。五杯目やで。」
「うるさいな。はよ汲め」
「あんたそんなに飲め
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