それはガラスのような音がしているけれどもガラスではない/渡邉建志
 
{引用=
心のドアを叩き続けている音がする。とん、とん、とん、とん、とん、とん、とん、とん、とん、      とん、とん、とん、音の上に長い息。いまにも消えそうに。大きな爆弾が落ちて、人間がみんな死んだあとに、壊れのこった時計が静かに回っている。廃墟の中で動いているものはそれだけ。高速道路の工事が始まる。夜のあいだに。誰も寝静まり知らないあいだに、高速道路の工事が終わる。階段が消える。





夢だったんだろうか。僕は後ろの海ばかり見て。
つぶやいた。
君は自転車を坂を滑らせて、海の向こうにはひとつの大きな鯨が泳いでいる
と言った。あの青のした。
いま僕の隣を自転車を坂に
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