イリマジル/
彰
夏の初め
曇り空の海に浸かり
上向きに浮かぶ視線は
隠れている
太陽を探すばかり
くるりと反転して
水面を押して
飛び立って行くであろう翼を
もぎ取る勇気もなくて
黒い染みを広げ
厚くなる雲に
期待を寄せる
波に揺れる額を
ときどき押して
沈めることくらいが
触れる唯一の方法で
つむられる瞳に
僕の姿が一瞬でも
映るのであれば
こんなにも怯える事など
なかっただろう
握り締めた手のひらで
ひどく爪先だけが冷たい
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