生煮えアトム/uwyeda
そうして、ソファーの陰で私は寝転んでいた。
頁のめくれる音がさわさわと耳障りで、
何を言うでもなく寝返りをうった。
まだまだ空は高く遠い。
ソファーの下辺りに沈殿している淀んだ空気が、
だんだんと満たされていって私を浸していく。
懸命に扇風機が風を漕いで、
一瞬ふわりと持ち上がってまた床に沈殿。
ここら一帯はもうほとんどが床上浸空していて、
生鮮食品などを床に置かないように気をつけている。
空気を掻きながら、台所へむかい、冷蔵庫を開けると、
キンキンに冷えた空気が足下をするりと抜けて、
代わりに生煮えになったやつが押し込まれていく。
アイスを一個取り出してソファーに戻った時にはもう、
半分くらいが温い風に囓られていて、仕方なく一口で飲み込んだ。
ああ 今日も 何もすることが ない
せめて涼しい夢が見られるようにと、
白熊の描かれたブランケットを掛けて、
そうして、ソファーの陰で私は寝転んでいる。
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