人間の大地/小池房枝
優しかったり穏やかだったりしない
洪水や日照りを繰り返しがちな日々を
かといってその激しさゆえに
いっそ爽快であるというわけでもない風や嵐
願っても祈っても途絶えがちな水脈を
これが故郷
これが故国と
思い定められるか
出来るならば旅立つがいい
誰かを迎え入れるのもいいだろう
そうして出来るならば
いつか/いつでも帰って来るがいい
何度でも何回でも
そこに/ここにこそ骨を埋める為に
その時にだけ少しは地味も増すだろうから
その度に少しずつ土地も肥えていくだろうから
うまくいけば
やがて誰かが足早に通り過ぎるとき
木陰のひとつも投げかけてやれるかしれない
そうしてその時
骨は/自分は
すっかり土に還っていなければならない
王国のたった一人の民として
王として
大地そのものとして
旅人の足をつまずかせたくなければ
その時までには
必ず
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